高校生になりたての頃、誰もがそうであったように
少し大人びた事をしてみたくなった。
バンドもバイクも刺激的ではあったけれども
それは所詮子供の戯言の域を出てはいなかった。
と、なれば、考える事は酒と女だ。
酒と女というニュアンス自体が、ムンムンと大人の雰囲気を醸し出しているではないか。
思い立ったら吉日!即実行できるのは若い証拠だ。
早速、僕らは肩をいからせながら、とあるRock専門のBarに出かけた。
今から考えると、そんなガキっぽい4人が薄暗い地下の
Barのカウンターに宿っていても
絵にもなんにもなっていなかったとは思うのだが
とにかく、僕らは咥え煙草をくゆらせながら
覚えたてのメロンフィズ(笑)なんぞを啜っていた。
そして、
時計が12時を回ったころ・・・
突然、S女子高の制服を着た女が
重い扉を開けて、階段を下りてきた。
その瞳は、まるで見えない誰かに戦いを挑むように
店内中を見回し、そして
静かにカウンターの隅に腰を落ち着けた。
おもむろに煙草を咥えた彼女の前に
さも当然のようにバーテンが差し出したお酒が
オリーブの浮いたマティーニ!
女子高の制服にマティーニ!!
目一杯気取っている僕らがメロンフィズなのに!
そして、けだるそうに
頬づえをつきながら
彼女は 文庫本を読み始めた。
僕は
半世紀近く年生きてきたが
あれほど頬杖姿が完成されてる女を
未だかつて見たことが無い。
それほど、完璧な頬杖姿だった。
彼女は、今でもほの暗い地下のBarで
あの完璧な頬杖をついているのだろうか。