アニメの「鬼平犯科帳」を観てみた。
これは僕の知っている鬼平ではない。
が、悪くはない。
賛否両論はあるだろうと思う。
正月2日に将軍にお目見出来る立場の旗本である平蔵が月代もないなんてどうよ!って話なのだが、そこはそれ、新しい解釈があってもいいのかなと思うのだ。
僕が知っている鬼平は、コミックならさいとうたかお。
時代劇ならやはり中村吉右衛門だ。
特に吉右衛門の鬼平は原作の鬼平を最も具現化出来ているような気がする。
だがこのアニメの鬼平が原作のイメージからは程遠いのは前述のとおり。
まず見た目が若い。
髪はロン毛のくせ毛。
細身で華奢な体つき。
一見しただけでは「誰だよ!」となるのは当然。
しかしやがてそれも気にならなくなってくる。
不思議と違和感なく観られるのだ。
ただひとつ不満なのが、「食」に関する解釈が殆どないこと。
池波文学は「食」が重要なファクターとなっているのは周知のとおり。
池波氏ご自身も、「僕は食で季節感を出す」と折に付け書かれているが、このアニメではそういうシーンは殆ど無い。
時に「五鉄」で軍鶏鍋を突付くシーンがある程度か。
その分、違うアプローチで季節感を出しているのはお見事。
鬼平と相模の彦十が五鉄で酒を酌み交わすシーン。
傍らの角行灯の中には一匹の夏の蛾が入り込んでいる。
彦十の背に映るその蛾の影が、決して嬉しくはないその夜のふたりの会話を見事に表現していた。
そしてもうひとつ特筆すべきは江戸の街のその風景描写だ。
これはため息が出るほど美しい。
長屋の風景では長屋の真ん中を通る、生活排水を流す溝さえちゃんと描かれていたのには驚かされた。
アニメ版の鬼平。
何度も言うが、決して悪くはない。
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