深夜、自宅での仕事をしながらCSでオンエアされているのを観るともなく観る。
『ローズマリーの赤ちゃん(Rosemary's Baby)』1968年 アメリカ映画
製作:ドナ・ホロウェイ 監督:脚本:ロマン・ポランスキー
原作:アイラ・レビン 撮影:ウィリアム・A・フレイカー
音楽:クリストファー・コメダ
出演:ミア・ファロー、ジョン・カサベテス、モーリス・エバンス、ルース・ゴードン
公開が1968年なので、封切りでは観ていない。
僕が観たのは1972年、14歳の夏。
確か西新宿カブキ座という2番館で観たと思う。
その時は、いや何でこんな映画を見に来たんだろうと後悔しきり。
一緒に行ったM子ちゃんも妙に無口になるし・・・。
ポランスキー監督の何とも言えない「ヌメッ」とした演出、得体の知れない恐怖感から見る見るうちにやつれていくミア・ファロー、クリストファー・コメダの哀愁を帯びたメロディ。そして闇に響く赤ちゃんの泣き声。
アメリカ映画なんだけど、ヨーロッパ的な陰湿さが全編に纏わり付いている。
今観てもやたら怖いぞ。
監督のポランスキーはポーランド人ということになっているが、実はユダヤ人。
ナチスのホロコーストで両親は収容所送りになり、自身も逃亡生活を送っている。
そんなバックボーンを持つポランスキーだからこそ成し得た恐怖感ではないだろうか。
そして何よりも怖さに拍車をかけていたのは、ポランスキー監督の奥さんが実際に惨殺された1969年の事件。
これはこの映画の呪いだったのだと、当時の僕らは大真面目に信じていた。
基本的に、僕は洋画のホラーはあまり怖いとは思っていない方だ。
ホラーに関して言えば邦画の方がずいぶん上質だと思っている。
それは西洋人が考える恐怖感と、僕ら日本人が覚える恐怖感の違いから来るのだろう。
そしてもうひとつ忘れてならないのが、映画館だ。
昔の映画館は汚かった。本編が始まれば、灯っている明かりは非常口の青っぽい光だけだし、妙にかび臭いし、ロビーは便所臭い。
館全体にジメッとした湿気が淀んでいた感じがあった。
そんな雰囲気が、いかにもホラー映画によく似合っていたのだ。
それに比べて最近の映画館は清潔だし、何よりも明るい。
そしてくっきりはっきりのデジタル処理。
映画の中の妖怪や怪物も、さぞかし住み難いだろうと同情してしてしまう。