何てことだ。
自由に歩けるようになってからというもの、病院内を用もないのにウロウロしているのだが、廊下で行き交う患者さん、ラウンジで寛いでいる患者さん、開け放された病室の扉の向こうに見え隠れするベッドに寝転ぶ患者さん。
その全てが見事にお年寄りばかりなのである。
昨日まで僕の隣のベッドにいたおじいさんは帰っても一人暮らしなんだそうな。
僕が心配しても仕方のないことなのだが、思わず彼の今日からの暮らしに思いを馳せてしまう。
これが今の日本社会の縮図なのか。
そして、この病院・・・いや、日本中の病院が恐らく同じような状態であろうと思われるそこに暮らすお年寄り達の行く末はどこに向かうのか。
暗澹たる思いなのだ。
もっとゆっくり出来るのかと思ったのだが、どうやらそんな事もないようだ。
昼食が終わり、午後の回診やら入浴やら一連の行事が終わると病棟にふと静かな時間が訪れる。
廊下に人影はなく、病棟全体がシンと静まり返る。もうすぐ訪れる長い長い夜を恐れ、誰もが首を竦めて閉じこもっているかのようだ。
廊下には一日の終りを告げる秋の西日が長く伸びるように差し込んでいる。
そんな西日を浴びてみた。
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