2023/10/20

It's a small world

 ♪小さな〜窓から〜見〜える〜、なんて曲があったようななかったような。


今日は入院9日目。もうひとりでどこへでも歩いていけるのに、主治医の許可が出ないので未だ付き添いがいないとトイレにも行けない状況が続いている。

となれば、今の僕が存在していい世界はこの総合病院5階の507号室、4人部屋の角の窓際のベッドの上だけ。

なんとこんな小さな世界にもう9日間も暮らしているのだ。


元気で飛び回っていた頃には想像すらできない世界だが、いざ自分がその立場になってみると、それはそれで案外悪くないような気もする。いや、それは痛みや身体の辛さがないからそう言えるだけであって、実際の闘病はきっともっと大変なのだろう。

そんな方たちには本当に申し訳ないと思うのだが、僕の入院は酒を抜く儀式のようなものなのかもしれない。













と、そんな入院中にチンペイさん(谷村新司)の訃報が飛び込んできた。

そう言えば、夏休み終盤恒例「24時間テレビ」のエンディングテーマを見るともなくぼんやり見てる時に、近いうちにこんな時が訪れるのではないだろうかという漠然とした予感を覚えた。加山雄三がチンペイさんの手紙を読んだ時、それは予感から確信に変わった。「彼はもう帰ってこないのだろうな」と。


1972年の夏、僕と同級生のHは倉敷のダイエーの屋上にいた。その年の春にふたりでフォークデュオを組み、練習はそこそこ続け、同級生の前では何度も演奏してはいたのだが、多くの知らない人たちの前で演るのは本当に初めての経験だったのだ。そんな僕らは白石島名産の御影石よりも固くなっていた。何か喋れば胃が口から飛び出してくるんじゃないかと思うほどの緊張感だったのだ。

そんな僕らに声をかけてくれた小汚いジーパン上下のおっさん(当時の僕らの目からみれば)がいた。

「自分ら中学生か?ええなぁ若うて。俺等おっさんやんなぁ笑」

それがチンペイさんだったのだ。そう、その日はまだ売れていないアリスの屋上ライブ、僕らはその前座という訳。

もう何を歌ってどうやって終わったのかも良く覚えていないが、あの真夏の夕方、うだるような暑さの中でアリスの演奏が響き『明日への讃歌』でのブレイクで一瞬だけ静寂が訪れ、僕は鳥肌が立ちまくっていたのを今も良く覚えている。




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