人種差別が色濃く残る1960年代アメリカ南部を舞台に、黒人天才ピアニストとそのボディガード兼運転手が演奏ツアーを通して友情を育む感動作『グリーンブック』。
粗野で無学なイタリア系のボディガード、トニーに扮するのは「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズや『はじまりへの旅』(2016)などで知られるヴィゴ・モーテンセン。
彼をツアーの運転手にスカウトした天才ピアニスト、ドクター・シャーリー役には『ムーンライト』(2016)でアカデミー助演男優賞を受賞したマハーシャラ・アリを迎え、笑いと感動に満ちた作品になっていた。
と、一般的な評価は各所で多く書かれているので割愛するとして。
僕は1980年代の初頭に無謀にも小説を書いてみようとしたことがある。
そのタイトルは『EXIT(非常口)』
ご多分に漏れず途中で挫折したのだが、その小説の冒頭はこうだ。
「人には『居場所』が必要だ。 そしてその居場所には必ず『EXIT(非常口)』が必要なのだ。」
この映画を観て、自分で書いたその言葉を思い出した。
ドクター・シャーリーには居場所がない。
黒人がクラシックを演奏することが許されない時代。
かと言ってジャズやR&BをPlayすることも自身が許さない。
白人には卑下され、黒人には嫉妬される。
ほんの短いシーンだが性的なマイノリティである場面も描かれている。
自身が何者なのか。
そしてどこへ向かおうとするのか。
その答えはトニーが教えてくれた。
「淋しいときには自分から動きな」
ツアー最終日をドタキャンした下町のセッションも圧巻だし、ラストのトニーの家族に迎えられるシーンも感涙ものだが、やはり僕がお勧めのシーンは、トニーが呟くこのシーンと、ツアーから帰ったドクター・シャーリーがカーネギーホールの階上のあの豪華な部屋で玉座に座らないカット。
人には『居場所』と『EXIT』が必要だ。
そんなことを改めて思い出させてくれたこの映画。
いい映画でした。
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