実は古い四コマ漫画が好きなのだ。
それも戦後から、新しくても30年代のモノがいい。
僕の育った家には、結構な量の本が本棚に収まっていた。
純文学から外国文学、はては哲学書の類までそのコレクションは多岐に渡っていたが、その中に4コマ漫画が結構な冊数で混ざっていた。
「サザエさん」は当時でほぼ全巻揃っており、長谷川町子の他の書では「意地悪ばあさん」「エプロンおばさん」「新やじきた道中記」なんてのもあった。
幼稚園か小学校低学年だった僕は、その類の四コマ漫画を良く読んでいた。
いつもおやつを食べながら読んでいたりしたので、こぼれカスやみかんの汁で出来た染みなどを今でも確認出来る(笑)
さて、「サザエさん」を始めとする長谷川町子の一連の漫画は語られる事が多いので、今日は違う漫画のお話。
まずは秋好馨による「轟先生」
当時の僕には知る由もないが、読売新聞に連載されていたらしい。
戦後すぐの風俗が今読むと驚きだ。
闇市や配給、何とヒロポン(今で言う覚醒剤)までが登場する。
基本的に大人向きの漫画なので、僕には理解できないお話や漢字も多かった。
そしてやはり新聞での連載漫画らしく、当時の世相をリアルタイムに反映しているので「ゼンケントクシ」なんて言葉をこの漫画で覚えたものだ。
これに比べるとやや理解しやすかったのが「フクちゃん」
作者は横山隆一。
こちらは朝日新聞への連載。
朝刊が「フクちゃん」、夕刊が「サザエさん」という贅沢な時代があったんだね。
この漫画を改めて調べてみると、主人公のフクちゃんは養子ということになっている。
スタート当初は「養子のフクちゃん」というタイトルだったようだ。
今では到底考えられないタイトルだね。
当時の僕は養子と言う言葉も知らないし、ましてや大人の複雑な事情なんてものも興味がなかったので、純粋にフクちゃんの活躍を楽しんでいたように思う。
とは言っても、やはり理解出来ないお話も多かった。
前述の「轟先生」も家族間の関係はかなり複雑だ。
そしてこの「フクちゃん」もまた然り。
そんな辺りに、両親が離婚し叔母に育てられていた僕が何かのシンパシーを感じたのかも知れない、と今になっては思うのだ。
そしてあまり好きではなかったが、そのくせよく読んでいたのが加藤芳郎の著による「まっぴら君」
こちらは毎日新聞での連載。
これはさすがに理解できなかった(笑)
世相をバッサリ切りつけ、風刺の精神も強いので、子供には難しかった。
飲み屋の場面も多いしね。
1ページ目、第1話は何と二重橋事件を取り扱っている。
それでも惹かれて読み耽っていたのはどういう訳なのだろう。
垣間見る大人の世界に憧れていたのだろうか。
他の漫画を読んでいる時はそんな事がないのだが、周りの大人達は、この漫画を読む時だけいい顔をしなかった。
それはやはり男女の関係の妙を書いた内容も多かったからなのだろうと、今となっては思う。
まぁそのおかげでとんでもない耳年増の子どもが出来上がった訳なのだが(笑)
さて、最後にご紹介するのは、僕が一番好んで読んでいた四コマ漫画。
長谷川町子のごく初期の作品、「仲よし手帳」だ。
実家を出て上京、祖父母の家に同居し学校へ通うマツ子さんが主人公。
お友達はタケちゃんとウメちゃんだったと記憶している。
何と1940年に最初の連載を「少女倶楽部」で開始している。
この表紙は復刻版。
当時の絵調はもっと古く、時代感がたっぷりだ。
我が家にある四コマ漫画の中でも一番古かったのではないだろうか。
僕が物心ついた時には、表紙も背表紙も取れて、紙は茶色く変色していた。
内容的には上に書いたように、上京し、転校したマツ子さんが引き起こすドタバタ劇なのだが、その中身は非常に戦前的だ。
旧い日本の道徳観がそこにはある。
親を敬う事を忘れていないし、もちろん教師は尊敬の対象だ。
勉学の傍ら家業を手伝うのは当然の事だし、子守もちゃんとする。
そして特筆すべきは、その言葉と所作の美しさだ。
そこには現代人が忘れ去った日本人の美徳が、至る所に散りばめられている。
そうだ!
一度実家に帰り、本棚の旧い本を漁ってこよう。
そしてあの頃と同じように、あまり上手くない硬いせんべいを齧りながら読み耽ってみたいと願う。
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