2019/01/21

My Favorite Movies Vol.1

『名もなく貧しく美しく』 1961年東宝
監督:松山善三 主演:小林桂樹、高峰秀子
美しく、そして哀しく気高い映画だ。

誤解を恐れずに言えば、僕は身体障害者の方同士の結婚には少々懐疑的ではあるのだが、その辺りもこの映画にはきちんと描かれている。

言うなればこの映画に登場する人たちは社会の最下層に生きる人々。
そんな彼らが幸せになろうと必死に足掻くのだが、その結果はあまり芳しくない。
貧乏ながらもやっと幸せを掴めたかと思うと、次から次へ問題が降りかかってくる。
それでもこの夫婦は懸命に、健気に生きていく。
が、その結末は・・・・・

娯楽の少ない時代の日本映画には、粗製濫造ゆえに見るに耐えられない映画も多いのだが、この映画のように名作と呼ばれる作品が多々存在している事も事実。
観客動員数がどうとかではなく、監督の伝えたい事がきちんと描かれている作品だ。


この映画は興行としても大成功したのだが、そのおかげで、「手話」というものが一気に世に知らしめられる事となる。
それまでは読唇術が主流であり、手話は蔑ろにされていた。
が、この映画がきっかけとなって世の中は手話が主流になっていったのだ。

主演の小林桂樹と高峰秀子との間に交わされる会話、それはほぼ手話で行われるのだが、その手の動きの美しさはどうだろう。
圧巻は何と言っても電車の窓越しでの会話。
それは思わず息を飲む美しい場面でもあった。

いつか仕事をリタイアして、無為な時間を過ごす機会ができたら
古い日本映画をゆっくり見たいものだ。

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